【社員を採用するとき】業務委託と社員・契約社員、アルバイトとの違いは?

ベンチャー企業では、まだ起業して間もなくは、社員を雇うというよりも、エンジニアやデザイナーなど、業務委託によってサービスを開発したり運営し、しばらくして事業が軌道に乗ってきてから、業務委託の方を社員にしたり、または、新たに社員を採用したり、アルバイトを採用するということが多くみられます。

そこで、【業務委託】と【正社員】、【契約社員、アルバイト】の特徴や違いをご紹介します。

1、業務委託の場合

業務委託の場合は、委託先が法人の場合と、個人の場合があります。
個人の場合でも、業務委託者は「個人事業主」となり、社員とは異なります。

業務委託が、社員・契約社員等との違う点は下記になります。

健康保険、厚生年金、雇用保険の加入が不要

会社の雇用者ではなく、委託者のため健康保険、厚生年金保険、雇用保険の加入、就業規則などの社内ルールの適用がありません。
会社から見ると、健康保険や厚生年金、雇用保険等の保険料の負担義務がなくなります。
また、健康の管理義務もありませんので、健康診断もありません。
労働基準法などの適用がない
労働者ではないため、労働者を守るための法律である「労働基準法」などの労働関係法令が適用されません。
そのため、労働時間に応じた残業代、年次有給休暇、最低賃金などの決まりがありません。
業務委託の場合は、特定の仕事の処理を目的に、契約で定めた費用を払います。

契約関係だけのため、解約したいときに終了できる

正社員を採用するには時間がかかりますが、業務委託であれば契約内容が合意できれば、すぐに開始できます。
また、業務委託の場合は、労働基準法の適用がなく、契約関係しかないため、解約したいときに終了できます。

正社員の場合は、解雇の制限が法律で決まっていますので、よっぽどのことがない限りは解雇はできません。
契約社員についても、通算5年を超えると無期に転換する、契約を更新しない場合、一定の条件に合致すればその予告が必要になるなど
法律での制限ルール決まっています。

2、正社員の場合

会社からみると、いろいろな面で業務委託のほうがメリットがあるようにも見えますが、
会社が社員を雇用するには理由があります。

特定の業務に限らずいろいろな仕事ができる

業務委託の場合は、契約で業務内容を定めなければなりませんが、社員の場合は業務内容が変わることが通常です。
会社内でジョブローテーションし、さまざまな業務をいろいろな人と経験し、多面的なものの見方をできるようにするなどもよく行われます。
このように、いろいろな仕事をしてもらうことができ、また具体的に指示をする必要もありません。

会社への帰属意識・会社の事業拡大へのモチベーション

業務委託の場合は、依頼された仕事を完成して費用をもらう、ということになりますが、
社員の場合は、会社に所属している意識をもって入社し、会社や事業を成長させたいというモチベーションも大きいです。
また、会社のビジョンに共感してもらったり、就業規則で様々な働き方の制度を導入することで、会社の文化が作られていきます。

社員の成長および社内へのノウハウの蓄積

社員の場合は、期間の定めのない雇用になるため、長期にわたって育成し成長してもらうことができます。
また、そのなかでスキルや技術、ノウハウを社内で教えあい、蓄積することができます。

3、契約社員・アルバイト・パートの場合

契約社員やアルバイトも、会社が直接雇用するという点では社員と同じですが、期間の定めがあることや、
アルバイトやパートの場合は、労働時間が他の従業員と比較して短くなります。

契約社員やアルバイトも、直接会社が雇用する労働者になるため、労働基準法などの労働関係法令が
適用されますので、労働時間に応じて残業代、深夜・休日手当、最低賃金などのルールは守る必要があります。

契約社員、アルバイト・パートの特徴は下記があげられます。

有期のため採用のハードルが下がる

契約社員やアルバイトも、社員と同じく、会社への所属意識やノウハウの蓄積などが見込めますが、
社員となると、期間の定めのない雇用になるため、会社としては採用に慎重になります。
しかし、契約社員やアルバイトの場合は、期間を限定できるため、企業にとっては採用へのハードルがさがります。
契約社員を経て、正社員になってもらうことも多くみられます。

注意点としては、契約期間中はよっぽどの客観的に合理的なやむを得ない事由がない限りは、解雇できません。
また、原則として3年を超える契約期間を設定することはできません。
契約の更新により、通算で5年を超えた場合は無期の社員に転換が必要です。

社員と異なる条件をつけやすい

契約社員やアルバイトなど有期社員の場合は、残業なしにする、勤務地を限定する、専門的なスキルがある人には通常の賃金テーブルと異なる給与にする
リモートワークのみにする、など、正社員とは異なる条件がつけやすいです。
正社員でできないわけではありませんが、その場合には制度の導入や、会社としての組織戦略も必要になります。
そういう点では、契約社員本人の要望にもこたえやすいのでないでしょうか。

少ない業務量をお願いしたいとき

業務量としてそこまで多くはないが、一定の労働時間を働いてもらいたいときはアルバイトやパートとして
社員よりも短い時間の労働をお願いすることができます。

アルバイトやパートで雇用保険、社会保険に加入が必要な場合・不要な場合

雇用保険の加入条件

雇用保険は下記の2つの条件に該当した場合に雇用保険への加入が必要になります。

【1】1週間の所定労働時間が20時間以上
【2】31日以上雇用されることが見込まれている
または、31日未満でも契約更新の可能性があり、31日未満での雇止めの明示がない
または、31日未満で契約更新がなしとなっているが、同様の雇用契約で31日以上更新された実績がある場合

健康保険・厚生年金の加入条件

下記2つの条件に該当した場合に健康保険・厚生年金(社会保険)への加入が必要になります。

・1週間の所定労働時間が30時間以上ある場合

または

・【501人以上の企業の場合】/【500 人以下の企業の場合で、労使合意がある】事業所で
下記をすべて満たしている場合
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上ある場
(2)月額賃金が8.8万円以上
(3)雇用期間が1年以上の見込まれる
(4)学生でない(夜間、通信、定時制を除く)

なお、社会保険の適用条件は拡大されていっているため、今後も法改正がある可能性があります。

ベンチャー企業は、会社の業務が拡大していくことに伴って、ヒトの増員が必要です。
業務委託、社員、契約社員、アルバイト・パート、それぞれの特徴やメリット・デメリットをもとに、
どのように業務を回していくか、どのような組織を作っていくか、組織戦略とともに検討していきましょう。